想像を絶するような光景に思わず息を飲んでしまった!
 今から26年前。僕は中学2年の夏休みで、襟裳岬の近くへ釣りに出かけていた。「朝まで仮眠だ」と車の中で横になっているとき、ラジオから「有珠山の地下でマグマが動いている。噴火しそうだ」というニュース速報が流れてきた。そして次の日、有珠は噴火し、札幌市街にも火山灰が降った。1977年8月7日のことだ。
 今回の目的地である火口原散策路へ車を走らせながら、僕はぼんやりとそんなことを思い出していた。あのとき僕は、まさか自分が生きている間に有珠がもう一度噴火するなんて思ってもいなかったし、ましてや温泉街からこんな近いところに火口が開くとは想像すらしなかった。自然はいつも人間の想像を軽く超えることを平気でする。
「西山火口」という案内に導かれて走って行くと、まるで観光地のような売店つき駐車場が現れた。というか、すでにそこは「被災地」ではなく、立派な観光地になってしまっていた。
かつての国道230号
▲散策路入口から、かつての国道230号を見る。
 まるで映画のセットのようだ

 
その先に広がる光景は衝撃的だ。かつて国道230号として洞爺湖温泉と虻田本町を結んでいた道が陥没し、大きな池ができている。池の中には折れた電柱が何本か。ほとりには乗り捨てられ、火山弾の直撃に遭ってベコベコになった白い乗用車。
道路のアスファルトはもちろん大きくゆがんでいる。まさにアンビリーバボー。これが現実の世界なのかと一瞬めまいがしそうになる。
 火口への散策路沿いにも爪跡は次々と現れる。火山灰で埋まった道路標識、地殻変動で階段みたいになってしまったアスファルト道路、そして地面のあちこちから立ち昇る白い水蒸気。そんな光景を見ながら坂を登りきったところに、大きなすり鉢状の火口がぽっかりと口を開いていた。火口の向こうには原型をとどめないほどひしゃげてしまった菓子工場。その昔、ここに国道ができたとき、将来こんな風に道の真上に火口が開くなんて誰が考えたことだろう?
火口と、地殻変動で被害を受けた菓子工場
▲不気味に口を開く火口と、
 地殻変動で被害を受けた菓子工場

 
 それにしても、有珠山はすごい山である。いや、有珠山そのものというより、このエリアの存在自体が奇跡みたいなものだ。だいたい洞爺湖温泉だって、言ってみればマグマの真上にあるようなものだし、前回の噴火でも温泉街の真ん中に火口が開いても不思議はなかったはずだ。
そんな場所で、厄介者であるはずの活火山を糧にして、多くの人が今もたくましく生活している。それどころか災害を逆手にとって観光資源化し、火山とともに新たな歴史を築いている。有珠山周辺は、まさに世界に誇るべき生のネイチャーミュージアムである。まだ見てない人は、ぜひともその目で確かめてほしい。

今月オススメの温泉 豊浦港の中に位置する
船の形をした良質温泉

【天然豊浦温泉しおさい】
天然豊浦温泉しおさい
 オープン3年目を迎える日帰り温泉で、ヨットの帆をあしらった入口の景観がまず目を引く。泉質はカルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉で、源泉の温度も50度以上ある本格的なもの。その名のとおり海に面して建っているので夕方になると噴火湾に浮かぶ漁り火を見ながら入浴できる。露天風呂も広々していて快適だ。

 ■虻田郡豊浦町字浜町地先海浜地
 電話:0142-83-1126
 入浴料:大人500円 小学生300円 3歳以上150円
 10時〜21時、年中無休
こんな旅あんな温泉
第28回 噴火後3年を経た有珠山で
北海道の鼓動を聞いてきた
 思えば、このコラムの連載が始まったのが有珠山噴火後ちょうど1年が過ぎたころのことだった。当時は火口の活動もまだ活発で、洞爺湖温泉市街にも立ち入り禁止の場所が多かった。あれから3年がたち、噴煙もすっかり小さくなって、火口は新たな観光資源になった。散策道が整備されてからもうずいぶんたってしまったけれど、僕はまだ行ったことがない。そこで今回は久しぶりに洞爺湖方面へ出かけ、有珠山の今の姿を見てくることにした。
噴火湾を一望できる展望塔で北海道の深い魅力を実感する
 さて、有珠山で大地の鼓動を感じた後は、噴火湾に出て豊浦町を訪れた。豊浦といえば特産品のイチゴやホタテが有名だが、数年前、港のすぐそばに立派な日帰り温泉施設が誕生し、今年はそのすぐ横に人工ビーチとキャンプ場を兼ね備えた「豊浦海浜公園」もオープンした。8月いっぱいの開設で、場内にはツブ焼きなどが食べられる売店があるのでオススメだ。
 最後に訪れたのは、その海浜公園の背後の山に立つ「噴火湾展望台」だ。場所は国道37号沿いに看板が出ているのですぐわかる。
入口から急坂を登ると売店があり、そこからエレベーターで上に昇る。ここからの眺めは素晴らしいのひとこと。 目の前に広がる噴火湾はもちろん、その向こうに駒ヶ岳、後ろを振り返れば羊蹄山が美しく裾を広げる。
 その昔、この地を訪れたイギリスの探検船・プロビデンス号の船長が、湾沿いに並ぶ有珠山や駒ヶ岳などの火山群を見て「ボルケイノ・ベイ」と呼んだことにその名の由来があるという噴火湾。僕はこの旅で、北海道の生命力というか奥深い魅力を、再び実感したのだった。
原生花園周辺の草原や駅構内を歩くツアー
▲眺め抜群の豊浦町
 ・噴火湾展望台

  ■噴火湾展望台(豊浦町役場)
     0142-83-2121
  ■有珠山西山火口群(虻田町役場)
     0142-76-2121

地図
▲札幌からだと、やはり中山峠経由が早い。洞爺湖温泉から
 先も、かなり道路が修復されて走りやすくなっている

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