ほっかいどう元気びと

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2018年3月4日のゲスト

木村 直樹さん
「株式会社KIM GLASS DESIGN 」代表取締役
ガラス工芸作家
木村直樹さん

北見市留辺蘂町出身 33歳。
地元の高校を卒業後、金沢で内装の仕事をしながら弁護士を目指し、中央大学法学部 通信教育課程で学ぶが途中で断念。
北海道に戻るため仕事を探していた時に、あるガラス工房のホームページにアップされていた作品に衝撃を受け弟子入り。
その後、いくつかの工房を経て2011年に独立し、「株式会社KIM GLASS DESIGN 」を立ち上げる。
第55回日本現代工芸美術展で現代工芸賞を受賞。

村井裕子のインタビュー後記

木村直樹さん 3月最初の「ほっかいどう元気びと」は、小樽のガラス工芸作家で「株式会社KIM GLASS DESIGN」代表取締役の木村直樹さん 33歳。
 「小樽がらす市」の実行委員長でもあり、小樽観光の目玉であるガラス製品をさらに定着させるための活動にも力を注いでいるという。若い発想で何を目指すのか、お話を伺った。

 木村さんと小樽ガラスとの出会いは偶然と言えば偶然。北見市留辺蘂町出身の木村さんは、高校を卒業後、金沢で内装の仕事をしながら弁護士を目指して大学の通信課程で法律を学んでいたのだそうだが、断念した途端に無性に北海道に帰りたくなったという。
 「すっかりホームシックでした」と話す木村さん、Uターンするために仕事を探し、あるガラス工房のHPにアップされていたガラス作品の美しさに惹かれて、押しかけるように小樽の工房に弟子入りしたのだそう。19歳からのガラス工芸作家としてのスタートだ。
 吹いて形を作っていく手作りのガラスに魅了されたというものの、最初は、「こんなに難しいものがあるのか」と溶けたガラスの扱いに歯が立たず、「表現の前の段階」で完全に立ち往生だったとか。元々、器用で何でもこなせてきただけに、「人生初、思い通りにいかない」のはとても悔しくて、これを何とかしようと逆に燃えたという。
 何度か工房を逃げ出したこともありながら、その都度、親方やそれまでの仕事ぶりを見ていてくれていた関係者に連れ戻されて今がありますと、木村さんは素直にこれまでを話す。
 何が最も辛かったのか、お話から感じられたのは、「自分自身の確立」に“もがく”辛さだったのではということだ。当時師事していた親方に心酔していたあまりに、作るものは「親方のコピーばかりでした」とのこと。認められたいと思う気持ちが先走り、親方に気に入られるものを一心に作っているうちに、自分は何をしたいのかがわからなくなったのだ、と。周りの人の手助けで独立した後も正直「方向性が定まっていなかった」という。
 転機になったのは、海外に勉強に行って、自分を客観的に見つめることが出来たこと。2014年にアメリカのシアトルのグラススクールで学んだことをきっかけに、「親方ならどうするだろう」という考えを、「素直に自分の選択をしてみよう」という考え方に変えることが出来たのだそう。外に出てみていろんな国の職人達の中で自分の積み重ねた技能は間違いでは無かったということに気づけたのが大きかったという。親方の作るものを目指して、盗んで、その通りに作ろうと訓練してきたことが間違いではなかった。海外の人と比べて劣っているわけではなかった、と。

木村直樹さん 今、会社も構えて、木村さんが目指すのは、小樽全体のガラス製品の質を向上させ、地元の人達にも日常的に愛されるようになること。小樽の子供達に、「将来の仕事としてガラス職人もあるな」と思って貰うことが大事であり、そのために「思いをもっとのせていきたい」という表現を何度も使っていた。「小樽」というブランドはとっても強い。だからこそ、そこにあぐらをかいてはいけない。より良く変化させて行くために必要なのはオリジナリティ。「ものづくり」の世界でそんな風を起こしていきたいのだと伝わるお話だった。

 この収録の頃は平昌五輪の真っ最中。連日白熱する競技を観ていたからか、目の前の若さ溢れるガラス職人木村さんと新進気鋭のアスリート達が重なり合うような感覚を覚えた。
 例えば、前回から採用された新種目、スノーボードスロープスタイル。歴史あるスキーやスケートと違い、解説でも聞き慣れない言葉が飛び交っている。「おしゃれです」「かっこいいです」。スポーツにおしゃれ・・・? いったいどういう技がおしゃれなのか旧人には解らずじまいだったが、聞けば、この競技、技の難易度や着地の綺麗さの他に「独創性」が判定基準にあるという。・・・とすれば、「独創性がある=おしゃれ、かっこいい」か。
 ガラスを通してものづくりを究めたいという木村さんのお話を聞いていてふと繋がったのが、その「独創性」ということころ。次の時代を作っていくのはその都度その都度周りが考えもしなかった発想であり、それ以前とはひと味もふた味も違うセンスが新しい風になるのだと改めて感じたのだった。
 ことほどさようにオリンピックは沢山の興味深いワードを運んでくる。これまでと意味のズレを感じたのが「クリーン」という言葉。スノーボードの選手のみならずフィギュアの羽生選手も「クリーンに滑れば絶対に勝てる」と使っていたので、今最も“鮮度のいい”ワードなのだろう。我々の「クリーン」は政治の世界などの「不正のない、清廉潔白」という意味だけど・・・「ズルをしないで技を決めます」などという意味では勿論ない。「鮮やかに」という意味のほうなのだなと想像したが、若者の言葉はもはや「第二母国語」の感あり。微妙にスイッチの調整を迫られるなぁと感じたのがこの平昌五輪だった。う~む、新人類は独創的だ。(・・・って、この「新人類」という言葉はまさか死語か?)
 さらに、女子カーリング・LS北見の選手達の銅メダルの快挙に熱く感動すると共に、彼女達の、明るさを保ち続けるコミュニケーション能力には学ぶことが多かった。特に、あのキーワード「そだね~」は、高度なコミュニケーションスキルである「受容」の意思表示だ。対等の立場としてのチームメイト同士、個々の提案に対しどんな状況にあっても否定せず、突っかからず、黙りこまず、まず受け止める。その上で自分の意思表示をして、着地点を共に探す。それは各々が自己コントロール力を備えているからこそのたまものだ。人と人との間の空気を冷やさない「相槌」マジック。しかも道産子イントネーションだからこその温かさ。闘志や根性むき出し、怒号や叱咤で鼓舞するというのもひとつのやり方かもしれないが、こういう人間力を感じさせる「ステイポジティブ」な闘い方もこれからの時代の「独創性」のひとつになっていくに違いない。
 「アスリート」「ものづくり」のみならず様々な分野で自己ベストな未来を目指す若者達。彼女ら彼らが発するものに「ほんとに、そだね~」と尚も学べる「旧人類」でありたいものだと素直に思っている。

(インタビュー後記 村井裕子)

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