ほっかいどう元気びと

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2018年3月25日のゲスト

奥田 龍人さん
「認定NPO法人シーズネット」理事長
奥田龍人さん

札幌市出身。66歳。
同志社大学法学部を卒業後、北海道庁に入庁。障がい者や児童福祉の仕事に携わったのち、43歳で退職し、医療法人に勤める。そこで出会った当時の医療福祉部長でソーシャルワーカーの岩見太市さんが立ち上げた「シーズネット」に賛同し、運営にも関わり、2013年からは理事長を務めている。

村井裕子のインタビュー後記

 “脳は経年劣化しない”というキーワードを前回のこの欄で書いた。
 「年をとるほど賢くなる『脳』の習慣」(バーバラ・ストローチ著 日本実業出版社)からの引用だ。名前が出てこなくなったり何をしに二階に上がってきたのかを忘れたりという現象はありつつも、論理的に事柄を掴み、決断が早くなるといった能力、いわゆる「知恵」や「叡智」は衰えるどころか中年以降でも成長するとしたら、年齢のせいにして気力を萎えさせるのは勿体無いこと・・・そんな思いを記した。
 この本の中でもうひとつ興味深かったのは、「私達の脳は年をとるにつれてより楽観的になるように出来ている」というところ。一般的には、中高年は「ストレスが溜まってまいっている。感情がネガティブ。子供が巣立つと『空の巣症候群』」などと言われたりするが、そんなことはない。脳は「ポジティブに向かうように出来ている」のだそう。人は人生の残り時間が少ないことを意識し始めると、年をとるにつれて、「否定的な情報よりも肯定的な情報により集中する」「悪いことを避けつつよいことに集中する」という。
 現実は確かにそうだ。私の周りの60歳以上の人達は皆元気で明るい。私自身も「ま、いっか」と笑っていることが増えているし、姉妹で久々に会う時など箸が転ばなくても笑ってばかり。中年になった姉妹はなぜ一緒に温泉へ行くのかが分かる年頃(?)になり、何とも楽しい。
 脳は上手く出来ている。年を重ねることで、「楽しい方へ、楽しい方へ」と舵を取るように出来ているのだとしたら、その能力に素直に従えばいいのだと改めて思う。
 「ほっかいどう元気びと」、今回も期せずして「より良きシニアライフ」がテーマ。「認定NPO法人 シーズネット」理事長の奥田龍人さん(66歳)にお話を伺った。

奥田龍人さん 「シーズネット」は、高齢者自身が自立し、安心出来る老後の人生を自らのパワーで創り出そうと2001年に立ち上げられた活動団体。初代理事長の岩見太市さんによって創設され、当時共に運営に関わった奥田さんが、岩見さんの跡を継ぐかたちで2013年から理事長を務めている。現在1000人ほどの会員がいる「シーズネット」のモットーは、「仲間作り、居場所作り、役割作り」と言い、趣味や娯楽などを楽しむサークルを始め、高齢者自身が取り組むボランティア、さらには、孤立防止のための様々な仕組み作りや、介護予防のために自分で出来る取り組みの提案など、日々ニーズが見えたらチャレンジするという方法で「豊かなシニアライフ作り」のサポートを進めてきたという。
 元々は北海道庁の職員として障がい者や児童福祉の仕事に携わってきた奥田さんだが、さらに民間のフィールドで福祉活動に取り組もうと43歳で医療法人に転職。その際に岩見さんに出会い、高齢者福祉の分野に力を注いできたのだそうだ。福祉という仕事が奥田さんのミッション。障がい者のための分野であれ高齢者の分野であれ、そこに取り組む根本の志は一貫していて、どのような状態の人であれ“地域でともに暮らす”ということが大切であり、その人達の“自立”のために何が出来るかを考え続けてきた人だ。

奥田龍人さん そういう「共生」と「自立」のためのサポート活動を続ける中で奥田さんが大切だと思っているのは、高齢者自らがそれぞれ出来ることで何かに関わり、「自分が何かの役に立っている」という実感を得るということ。まだまだ元気な高齢者にとっては「役割作り」がとても大切で、「支えられる側も努力してねと言っているんです」とにこやかに話す。それは、ほんとうに助けが必要になった時のための準備でもある。そして、そのためにも団塊世代の人達にもっと「シーズネット」の意義を知って貰い、活動を支えて貰いたいと強調されていた。
 人数が最も多いとされる、現在60代後半から70代にかけての人達。その人達の「豊かなシニアライフ」への意識がさらに高まれば、その身近な家族や友人達との繋がりも柔軟で心地良いものになるだろう。ふと、年齢を見直してみると奥田さんは66歳。団塊世代より年下の世代。初代理事長の岩見さんにしろ、奥田さんにしろ、自分が・・・ということ以上に、どうすれば社会がより良くなるかということをテーマに高齢化問題解決のための活動を続けてこられた人達が確実にいるのだと改めて感じさせていただいた。

 奥田さんが収録後にも繰り返し話されていたキーワードは、「元気なうちから社会参加」、「まだ元気なうちから関係作り」という言葉。元気なうちから準備をしたり、学んだり、人と人との間で考え方を柔軟に変えたりすることが出来れば、将来の“孤立化”を防ぐことが出来るし、支えられる状態になった時にもSOSを出すことが出来るという。「そうやって必然的に動くことが介護予防にも繋がりますしね」と、早くから意識を持つことの大事さを繰り返されていた。
 前述の本の中にも、監修をされた脳研究者・池谷裕二さんの解説で、「老後の質を決定づける要因こそが、『中年をどう鍛錬するか』という過ごし方になる」という表現があった。
 過去の人生を失敗とみなして愚痴と後悔を繰り返したり、老化そのものを受け入れられずに不平不満を繰り返したりという老年期を迎えないために、40代からの中年期の鍛錬が必要なのだ、と。
 一本ずっと続いてきた道が、中年という坂道にさしかかるあたりで、二本に枝分かれしているのだろうなと思う。「この先は誰かが何かやってくれるだろう」とじっと動かない道と、「自分が出来ることは何か」を考えて動いてみる道と。
 「支える側も支えられる側も、努力をする」という奥田さんの言葉を噛みしめながら、「より楽しく努力出来る」道をみんなで共に模索して行けたらいいなぁと、これからの高齢化社会を想像しながら思いを巡らせてみた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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