ほっかいどう元気びと

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2018年4月29日のゲスト

山本 順平さん
「Nos LUZ BAR Coeur de Lion」
オーナー・バーテンダー/
「リバリュー北海道プロジェクト MIRAIE」代表
山本順平さん

北海学園大学 卒業。
高校の社会科教師として2年間勤めたのち、BARで修業を積み、2011年にお店「Nos LUZ BAR Coeur de Lion(ノース・ルース・バー・クール・ド・リオン)」をオープン。
翌年から、道産食材を生かしたカクテルを提供する一方、更に一次産業と繋がることを目指し、廃棄されてしまう農作物などの価値を高めるため、仲間たちとともに2016年に「リバリュー北海道プロジェクトMIRAIE」をたちあげた。

村井裕子のインタビュー後記

山本順平さん 前回のインタビュー後記で、7年間の『ほっかいどう元気びと』マップを思い描いてみるといろんな繋がりの可能性が見えてきそうでワクワクすると書いた。ひとりひとりが取り組む仕事の“根っこ”を伸ばしていくと、影響し合い、支え合う連携が無限に広がっていくだろう、と。
 前回の山本吉信さんは岩見沢のパン屋さんとして一次産業と結び付きを深め、地域のための食文化を次へ繋ぐ取り組みをされていたが、今回も苗字が偶然同じで“山本さん”。その取り組みも期せずして同じ括りと言えるだろう。“一次産業との繋がり”で自身の仕事から北海道の未来をより良くすることを考えている人だ。分野は飲食業。バーという“発信基地”から、パン屋さんとはまた違ったやり方で持続可能な北海道のための活動を続けている。札幌・すすきのの「Nos LUZ BAR Coeur de Lion(ノース・ルース・バー・クール・ド・リオン)」のオーナーでバーテンダーの山本順平さん(33歳)がその人。目指す思いを伺った。

 山本さんのバーでは、オリジナルのカクテルに道産食材が絶妙に工夫されている。トマトなどの野菜や果物、乳製品、昆布に至るまで、自分の足で産地に出かけて発掘し買い取った素材を、旬に応じて、あるいはお客さんの好みや体調に合わせて提供しているとのこと。“カクテル”という創意溢れる二次加工により、価値を付加するという仕組みだ。
 北海道の農業・漁業・酪農業が手塩にかけて生み出す食材に関心を持ったのは、知り合いの農家に手伝いに行き、規格外などで廃棄されるトマトの山を目の当たりにしたことからだったそう。農家としてもどうすることも出来ない、持っていってもいいよ・・・と言われても全部を引き受けるなんてとてもとても無理。でもどう考えてももったいない! まずは出来ることをと考えて、バーで提供するカクテルに活用することから始めたという。
 夕方からバーを営業し、昼間や動ける休日などに実際に地方の産地へ赴き一次産業と繋がりを持つ中で、自分が携わる飲食業界がもっと積極的に工夫出来るものがあるはずと気づいたという山本さん。仲間達と立ち上げたのが、生産者と小売店、飲食店それぞれが相乗効果で元気になる仕組み作りとしての「リバリュー北海道MIRAIE(ミライエ)」というプロジェクト。飲食業に携わる者達が率先して道産の食材にさらなる付加価値を付け、生かしていかなくてはとバーのカウンターで多くの人達に思いを話しているうちに、共感する人達が組織化に向けて力を貸してくれたのだそうだ。
 思いや夢は実際に言葉にしていると実現する。“今の時代だからこそ”の同じ思いの同志が引き寄せられて横の繋がりが出来、形になっていく・・・そんな自然発生的なスタートだったのだと伝わってくる。

山本順平さん 山本さんは思い立ったら、「誰かがやってくれるだろう」と待つのではなく、自分で動く人だ。「北海道、こうなったらいいな」とみんなが思っていることを人任せにするのではなく、「どうその壁を越えていけるだろう」と考える人。行動を下支えするのは、“こうしたい!”という沢山の思いだ。『ほっかいどう元気びと』は20分番組。放送で拾える話には限りがあるが、山本さんはこの日、収録前、収録、収録後とご自身の構想や込める思い、原動力などをユーモアも交えながら次々と言葉にしてくれる。一次産業と飲食店を繋げる構想から、若者達の居場所作りに繋がるようなUターン・Iターンの構想、いったん道外へ出ても“また戻って来たくなるような北海道”にするための構想、そして“もったいない”というキーワードがリンクする「バイオエネルギー」の構想などなど・・・様々な循環を軸に北海道を元気にしたいアイディアは溢れんばかり。
 志あるひとつひとつの構想に頷きながら、それら全部を放送出来ない申し訳なさを伝えると、「こんなふうに、とにかく思いを聞いて貰えることが自分のやっていることの一番の確認になって有り難いです」と山本さん。
 ああ、こういうことこそが番組の役割であり醍醐味。私自身を、ひとりひとりの“棚卸しのための装置”として使って貰えたら何と嬉しいことだろう、そうやって話す中にその人自身の再発見の瞬間があったとしたら何とエキサイティングなことだろうと、インタビュアーとしての役割感も改めて感じさせて貰えるやり取りだった。

 そして、若い山本さんの志を支えている確固たるものが「尊敬する師の力」だということもお話の中から感じられたこと。バーを経営する前の職業は高校の社会科の教員だったそうだが、大学時代にアルバイトとしてバーの世界に飛び込み、そこで出会ったバーテンダーの師匠が人として大きな影響を与えてくれたことが忘れられず、2年間の社会科教員経験の後、その尊敬する背中を追いかけるようにバーの世界に転身したのだという。
 師匠が付けてくれた店名が「Coeur de Lion」。意味は「ゆるぎない魂」。自分がぶれなければ、自分のこの仕事で目の前のお客様に何かを伝えることが出来、その人の中の種がより伸びていくための力になれるのではないかという思いを持っていると話されていたが、立ち位置が教師であれ、バーテンダーであれ、目の前の人に何が出来るのかを考え続けるということがどちらにも共通する仕事の普遍的な意味なのだろうと感じられた。

 インタビューの後、語られた思いやキーワードを咀嚼しながら、そのまま“私という容れもの”の棚卸しが出来るのも実はインタビュアーの醍醐味だと個人的には思っている。
 「“ゆるぎない魂”とは、私にとっては何か? どうやってぶれない自分を作るのか? そのために日々出来ることは何か?・・・etc.」
 自分と向き合い、沢山の問いを投げかけ、考え、言葉にし、そして、自分なりの答えを自分自身で出していく。その、少し“面倒な作業”を厭わず続けることで、自分の足元の“根っこ”をさらに地中奥深くに伸ばしていくことが出来るのではないか。それこそが「ぶれない自分づくりの地道な作業」であり、「ゆるぎない魂づくりのさらに地道な作業」なのではないか・・・そんなことを、この後記を書きながら思い巡らせている。
 “志という根”を、枯らさず、腐らせず、深く伸ばしていくのはなんとも果てしない取り組みではあるが、そのヒントは人の思いの中に確実にある。必ず、ある。
 だからこそ、「元気びと」ひとりひとりの心の根から表現される言葉を大切に受け渡していこうと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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