ほっかいどう元気びと

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2018年5月27日のゲスト

真尾 秀幸さん
地図と旅行を楽しむ会「コンターサークル-S」主宰
真尾秀幸さん

栃木県足利市生まれ 63歳。
北海道大学医学部に入学、「鉄道研究会」に入会し、当時顧問だった地図歩きの達人でエッセイストの堀淳一さんと出会う。
その後、堀さん主宰の「コンターサークル」に入会し、旧道・廃道、産業遺跡などの地図歩きをはじめる。
2016年からは主宰を務め、病院の麻酔科医としての仕事の傍ら、地図歩きの魅力と文化を伝えている。

村井裕子のインタビュー後記

 世の中、次から次へと呆れることが起こる。セクハラ問題、スポーツ指導者のパワハラや不適切な選手管理の問題、暴力事件・・・。あれ、なんだかこれらには共通点がある。過剰な“男性性”の暴走だ。“男性の暴走”ではなく、“男性性の暴走”。(だから、女性の中の男性性が過剰に暴走しても同じようなことが起こる)
 ここ半世紀ほどで人権意識はずいぶん良い方に変化し、個々の人間観や女性観も変わってきたとは思うが、水面下では変われていないものも確かにある。時代の変化に追い付けず、行き所を無くした悪しき男性性が、駄々っ子のように暴れているのだろうなぁ・・・などと、思うこの頃。
 人であれ国であれ、“時代”の移り変わりの中で、悪しき慣習を取り払い、より良いものを積み重ねていくという視点を持つことはほんとうに難しい。“意識の断層”、“価値観の高低差”はこんなふうにいつの世も発生し、その度に地殻変動が起きているのだろう。そして、その時々に人間は試されているのかもしれないなと思う。

真尾秀幸さん 今回の「ほっかいどう元気びと」は、そんな世間の“断層”が引き起こすあれこれから時には離れてみて目線を全く違うところに置いてみるのもいいのでは・・・と感じたインタビュー。
 札幌で45年もの長きに渡って地図を片手に興味ある場所を実際に歩くという楽しみを追求しているサークルがある。去年、91歳で亡くなったエッセイストで地図研究家の堀淳一さんが始めたという「コンターサークル‐S」。現在の主宰を務める真尾秀幸さん(63歳)にその“地図歩き”の魅力を訊いた。
 “コンター”とは“等高線”の意味だそう。まさに、タモリさんが好きな“高低差”。そんなテレビの影響で人気を集める“町歩き”とはどう違うのかを収録前に確認すると、件の「ブラタモリ」は“町”を歩いて新たな発見をすることが多いようだが、自分達の活動はどちらかと言えば“郊外”。旧道、廃道、産業遺跡、鉄道廃線跡、そして、まだあまり知られていない湖沼などを確認しに地図を持って出掛けるのだという。
 聞けば、サークルの会員達はそれぞれに得意分野があるのだそうで、ある人は鉄道、ある人は産業遺跡、ある人は湖沼と、互いに場所の提案などもし合うとか。「会員の皆さんはどういう方々が?」と問いかけると、真尾さんの頭の横に漫画の“吹き出し”で「?」が出たような表情。会員たちの日々の“仕事”をことさら考えたことはなかったなぁといった表情だ。なるほど・・・そうなのだ。それぞれの興味は、地図であり、それを確かめるべく実際の場所であり、そして、そこから膨らませる想像力。共に歩くメンバーがどんな仕事をしていようがどんな役職についていようが、そういう社会の構成員としての“属性”は全く眼中にはない。そういう仲間なのだということが一瞬の表情で伝わってくる。

 真尾さんご自身は元々鉄道ファンで、北大に入学と同時に「鉄道研究会」に入っていたそうだが、当時その研究会の顧問で、後の「コンターサークル」の主宰者となった堀淳一さんの魅力に惹かれて卒業後に真尾さんも入会。“地図歩きの文化”を伝える活動を共に続けてきたという。かつて北大で物理学を教えていたという堀さんだが、退官して「地図研究家」を名乗り、地図を主題とした多くの本で道内外に多くのファンを得ていたとか。会員は一時200人近くにもなったというその堀さんの魅力はどういうところだったのか、真尾さんに問いかけると、「子供の頃の心をずっと持ち続けていた人でした」と言う。地図を見るその気持ちが子供の頃に抱く好奇心そのままであり、実際はどんな土地でどんな風景なのかの興味が大人になっても薄れない。そんなところが人間的魅力だった、と。
 そう言えば、ドライブ用の道路地図ではなく昔社会科で使っていたそれこそ等高線がはっきりと描かれた地図を眺める時間など大人になると皆無に等しいことに気づく。けっこうあの時間は面白かったじゃないかと社会科の時間が蘇ってくる。深緑色の表紙をめくって自分の住んでいる土地を確かめ、行ってみたい土地に想像力を働かせる。扇状地やら砂州やら、工場マークや灯台マークもテスト用に覚えたけれど、そういうものが実際の風景と一致すると確かに楽しかった。そういう、子供の心でワクワクする“発見”をすっかり大人になった慌ただしい日常の中でも大切にしたいということなのだろう。しかも、その興味を抱いて独りで歩くのではなく、皆で分かち合う醍醐味。他の人の興味をも改めて知り、そんな見方や面白さもあったのかと共有する楽しさがあるからこそ45年もこのサークルが続いているのだと感じさせていただいた。

真尾秀幸さん 淡々としながらも、お気に入りの場所のエピソードなどはとても嬉しそうに語る真尾さんにインタビューをしながら、「地図上でワクワクした場所に実際に行ってみて、期待外れだったということはないのだろうか?」と思い立ち、訊いてみる。「それはもちろん沢山ありますよ」と笑いながら、あるはずのものが無かったり期待外れの箇所もいろいろあったりすると教えてくれる。ただ、それも含めての面白さなのだと強調する。「そうか、こういうところだったか・・・」など、“ガッカリ”も“発見する楽しさ”のうちなのです、と。
 そして、収録後の雑談の中で出てきた一言が私はとても好きだったので、番組を締めくくるコメントでご紹介させていただいた。人の一生にも言えることだなと噛みしめさせていただいた言葉。
 「目的とは違う、また別のものをたまたま見つける面白さ。これがまたいいのです」
 “セレンディピティ”(=偶然に思いがけない幸運の発見をする能力)を研ぎ澄ますことで、人間社会の過剰なパワーゲームなどももっと鳥瞰で捉えることが出来るのかもしれないと改めて思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

~HBC報道スペシャルのお知らせ~
○HBCテレビ『“不幸な子ども”を生きて~旧優生保護法がもたらしたもの~』
 5月27日(日)の深夜2:20~3:14(日付は28日月曜日)
○HBCラジオ『拝啓・大隊長様~大学生が届ける沖縄戦の手紙』
 5月27日(日)の深夜2:30~3:00(日付は28日月曜日)
※ナレーションを担当しています。
今の私達が改めて考えなくてはならないテーマに、それぞれHBCの若い報道記者が真摯に向き合い制作しています。どうぞご視聴ください。

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