ほっかいどう元気びと

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2018年6月24日のゲスト

菅原 慶子さん
ちょびりこ。ジャム研究所 所長
菅原慶子さん

札幌市出身 48歳。
会社勤めをしながら趣味でジャム作りを楽しんでいたところ、夫が北海道フードマイスターの資格をとったことをきっかけに、野菜の世界に興味を持つ。
ある日、雪の下大根を買いすぎてしまい無駄なく食べるにはどうしようかと考え、ジャムにするというアイデアが浮かぶ。
やがて手作りの野菜ジャムが、東京 東武デパートの北海道物産展のバイヤーの目にとまるなど広がりを見せ、2009年に札幌市東区の民家を工房に「ちょびりこ。ジャム研究所 」を開く。

村井裕子のインタビュー後記

 私が各地で行っている「話し方」の継続の講座は、10年が経つうちに“てつがくカフェ”のような雰囲気になっているとこの欄でも書いたことがある。参加者がそれぞれ持ち寄る話題は、生き方の考察から人とのコミュニケーション、社会情勢や世界情勢への感じ方、読んだ本や観た映画の話、はたまた梅酒や甘酒の手作りのススメ・・・などなど多岐に渡っていて、“お喋り”ではない自己表現の楽しみを共有している。
 この講座で“得るもの”は、もはや“話し方を上手にする”を超えて、“思いを言語化”し“自分を知る”ということ。そして、「人はそういうことを感じ、思い、考えるのだ」という“他者を知る”視点の広げ方だ。
 よく出てくるキーワードが「“○○すべき”に縛られない生き方」。ものの考え方はもっと自由でいいのだと毎回互いに触発され、「私はどうしたいのか?」「何を大切にしたいのか?」という問をそれぞれが手にして帰途につく。実は、私自身がその気づきの実りを大いに貰ってきた10数年だったのかもしれないと思っている。
 今回の「ほっかいどう元気びと」でインタビューし、ここにも「○○すべき」から自由になるヒントがあるのを発見し、いろんなところに発想の転換はあるなぁと再確認した。

菅原慶子さん 札幌市東区の民家を工房にしている「ちょびりこ。ジャム研究所」所長の菅原慶子さん(48歳)。菅原さんが手掛けるジャムは野菜を主体に果物などと組み合わせて様々なジャムを考案し、こちらもかれこれ10年が経つとのこと。例えば、「たまねぎといちご」「だいこんとりんご」。私は正直に菅原さんに伝える。「『きたキッチン』でいつもパッケージに惹かれて手にとっていたが、ちょっと躊躇していた」と。ところが、この収録もあることだしと思い購入して食べてみたら野菜臭さがなくさっぱりとした美味しさだった、と伝えると、菅原さんは、「そうなんです。皆さん最初はびくびく・・・でも、意外に美味しかったと言って貰えるのが嬉しい」とカラカラと明るく笑う。
 そもそも野菜のジャム作りを始めたのは、買い過ぎてしまった雪の下大根をどうやって美味しく食べようと思ったのがきっかけだったとのこと。普通は塩で漬け物にするとかおかず用に煮るとか考えるけれど、塩を使ったものが自分はどうもうまくできない。それなら砂糖を使って何かしてみようと思ったのだと。(塩がダメなら砂糖?大根に?!)母親譲りの自由な発想の持ち主という菅原さん、最初は大根だけで、そして友人のアドバイスもあり果物と組み合わせるという幾多の工夫も積み重ねて、食べて美味しい野菜ジャムの可能性に気づいたのだという。
 実際に味わった時に、野菜のクセが全く無いのは果物を多めにしているからだろうという印象だったが、その配分は野菜が8割、味付けのための果物は2割ほどとのこと。どうやってこの優しい味わいを出すのか・・・については、「今のところは秘密にしています」。
 終始柔らかい雰囲気で、「私はジャム屋さんになろうと思ってやってきたわけではなく、面白がってやってきたらいろんな人に助けて貰ってこうなっていました」と“頑張らなかった”経緯を語るが、それでも、野菜の切り方や熱の通し方、配分、時間、そのトライの回数などなど、言葉の合間から徹底ぶりが伝わってくる。だからこそ評判を呼び商品になったのだろう。それは簡単なことではない。

菅原慶子さん 今、東区の民家を工房にした「ちょびりこ。ジャム研究所」でせっせと大鍋でジャムを煮、パック詰めもひとりで全て手掛けていると収録後に話していた菅原さん。1回に100個分作れるのだそうだが、「それだとパック詰めに飽きてしまうので、50個分ずつ煮るんです」と続ける。そんなところも、“好きなものに取り組む”秘訣なのだろう。
 ちなみに、今取り組んでいるジャムは?と雑談の中で訊くと、ビーツとゴボウをそれぞれ主体にしたものを考え中とのこと。私も含めて女性のみの「ほっかいどう元気びと」収録スタッフ、野菜のジャムに対してそれまでそれほど関心が無かったのだがお話を一緒に聞いているうちにジャムの瓶の蓋が開いたようにいろんなアイディア(余計なお世話?)が溢れ出てきた。
 「ビーツに合わせるのは同じような色でブドウはどうでしょう?」
 「キュウリは?キュウリのサンドイッチって美味しいですよね!」「キュウリサンドが作れるようなキュウリジャム!」
 「枝豆もいいなあ」「とれたてをすぐに茹でて、香りを楽しむ“ずんだジャム”も有りかも!」・・・
 アイディア嬉しく頂戴しますと菅原さんは優しく全部聞いてくれていたが、「ちょびりこ。ジャム」を間にきっとあちこちでこんなふうに“自由すぎる発想”を受け止めているに違いない。ジャムの瓶の蓋が開くと、にっこりと顔もほころび、同時に気持ちも開くみたいだ。
 ○○はこうあるべき、こうでなければ。・・・それも大事な時もあるだろうが、「面白いね~」と多様な発想をまずは純粋に楽しみたい。そんなことを思いつつ、翌日のランチに「たまねぎといちご」ジャムでサラダのドレッシングを作って食べたのだった。

 前述の私の講座。こんなキーワードも最近の主要ワードだ。
 「そういう考え方もあるね」「そういう人もいるね」・・・そして、「まぁ、いいか」と受け止めながら、尚もまた考えることを続ける。
 今の世の中、これまでの価値観を揺さぶるような出来事が立て続けに起こる。足元のアスファルトがぐにゃりと溶けるように、ふいに脱力しそうになる。萎えそうになる。それでも前に進むために、真っ直ぐな軸を据えながらもそれが強固過ぎてポキンと折れてしまわないように、少し揺れながらしなやかな強度を保つことも欠かせない。
 そんなふうに耐性を付けながら尚も保ち続けるそれぞれの“中心軸”、それこそが、「私は何を大切にしたいのか?」という問いへの答えで出来ている。
 それを確認し合える場をやはり大事にしていきたいと改めて思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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