ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30?9:50

2018年8月19日のゲスト

立野 豊子さん
料理研究家・料理教室「男の食彩」講師
立野豊子さん

札幌市出身 68歳。
天使女子短期大学栄養科を卒業後、調理師専門学校の講師を経て、結婚。
その後子育てが一段落したのを機に、料理に関する仕事を再開し、2007年からは札幌市厚別区の男性だけの料理教室「男の食彩」の講師として、家庭でできる料理を教えている。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

立野豊子さん 『ほっかいどう元気びと』、今回は、札幌市厚別区民センターで行われている男性のための料理教室「男の食彩」で講師を務める料理研究家 立野豊子さん 68歳。11年続けているこの教室が果たすもの、そして、料理を教えるという仕事を通して伝えたい思いを伺った。

 平成も終わろうとしている今、仕事に関しても家事に関しても、女性男性それぞれの認識はひと頃より大きく変化しつつあり、夫婦間の役割もそれぞれが納得した形での多種多様な関係性を個々に選び易くはなっている。“妻は夫に三つ指ついてお世話するもの・夫は妻を養うもの”という概念も昭和の遺物。「男子厨房に入らず」などと虚勢を張っていては、お腹がすく度に腹が立ち、心地いい精神的居場所まで失ってしまう。男性のための料理教室も、スキルを身に付けることのみならず意識変革を促す時代の要請。誰のためでもない、自分自身がより快適に生きていくための自分育ての場所でもあるのだろう。
 立野さんにまずは教室の様子を訊くと、開口一番、「いいなと思うのは、皆さんそれまでどんな仕事をしていたのかは話題にせず、共に料理をする仲間として一生懸命取り組んでいるところ」と参加者達の人柄を強調される。習う動機は、暇が出来たから覚えたいという人や、伴侶に先立たれて必要に迫られたという人、或いは、「妻が申し込みまして・・・」と少し照れながら参加する人もいるとか。新しい人の中には、さて何をどうするのか調理台の前で戸惑う人もいるそうだが、包丁の持ち方や出汁の取り方といった基本から始め、同じ料理を何度か繰り返す内容などをこなしていくうちにどんどん慣れていき、家でその成果を発揮するのが楽しくなる人もいるのだそう。そのうちに、それぞれに得意な分野が出来、例えば、写真が得意な人は率先して記録係りを買って出てくれるなど、料理を間に自然にコミュニケーションが交わされるのだそうだ。
 「始めた当初は、皆さん私の“お兄さん”位の年齢の方々ばかりで緊張しました」と立野さんは言うが、分かりやすさを工夫してプリントを渡したり、グループ分けで顔合わせを満遍なく変えていったり、買い物も自分達でとの仕組みを考えたり、さらには、年に一度はそれぞれが作ったものをバイキング形式で味わったりとイベント的な工夫もする中で互いに心地良い人間関係も作られていくのだという。

 何かを学ぶということ。それが、リタイア後となれば一歩を踏み出すのが難しかったり、億劫になったりすることもあるかもしれない。特に、男性が料理を習うということは、それまでの仕事の“プライド”が邪魔をするということもあるだろう。立野さんは、「最初の一歩がなかなか出ない方も多いかもしれないですけど、出来る事から始めればいいと思うんですよ」と優しく言う。習うために家から出て人の中に入ってみれば、そこから例えばウォーキングのお誘いがあったり、自分の得意なことを再発見したり、学んだ成果が家族を喜ばせたりと・・・何かが必ず変わっていくと思います、と。そして、そういう人達に関われるご自身の仕事を心から楽しんでいるということが口調から伝わってくる。
 短期大学で栄養を学び、専門学校の講師を務めた後結婚をされた立野さんは、専業主婦として子供を育てていたそうだが、子育てが一段落してから料理に携わる仕事を再開。料理教室の講師をする中で男性のための教室も担当するようになったという。
 「料理の大変さを知り改めて妻に感謝ですと話す人がいたり、妻を料理で手助けすることが出来て良かったと伝えてくれる人もいたりして感心することも多い。こちらが教わることも沢山あります」と立野さん。教える側、教わる側。人と人。時間を重ねていくことで互いにより良い変化が生まれる教室というのは、これからの高齢化時代、さらに求められていくのだろう。お話を伺っていて、いい教室というのは、教わる側は年齢が幾つであろうがどういう経歴であろうが“心を開く素直さがある”ということ。そして、教える側は相手の年齢が幾つであろうがどういう立場であろうが“真摯に向きあう”ということなのかもしれないと立野さんの教室に対する真っ直ぐな姿勢から改めて感じさせていただいた。

立野豊子さん そんなふうに、男性達に料理という“自立のための最大の技”を受け渡している立野さん。収録後に立野家のご夫婦事情は?と伺ってみると、「教室の生徒さん達にご主人も連れておいでよとよく言われてます」とユーモアたっぷりにご自身のことを教えてくれる。母親から“台所は女が守るべき”と躾けられた昭和世代。夫65歳のリタイアまで毎日お弁当作りを続けるなど、「すべて私がやってきました」とのこと。そんな経験もあって、料理は早いうちから皆出来るほうがいいと若い人や子供達の料理教室にも力を入れていますと続ける。障がいを持つ人対象の料理教室も大切に続けているというお話もされていたが、食は女・男かかわらずひとりひとりが自分の心身を保つための大事な要素、その方法を無理せず気負わずに身に付けて欲しいという思いが根本にあるのが伝わってきた。
 「もう少し早くから“夫育て”をしたほうがよかったかも」と笑う立野さんだが、「でも、リタイア後は私が外出する時に料理を作って置いてくるのはやめました」とのこと。「冷蔵庫に材料を入れておいて、好きなものを作って食べて貰う」新たなルールを取り入れ、互いに楽な気持ちになれたという。「そんな時の声掛けは優しく。夫が作った料理はちゃんと褒めて、その気になって貰うことが大事。・・・あ、これも全部言って貰っても大丈夫ですよ」と茶目っ気たっぷりなご夫婦エピソードで締め括ってくれた。

 いろいろな夫婦のかたちがあり、その役割もそれぞれの家庭内で互いに納得出来ていればすべて正解。そのためにも“暮らしのための技”を早めに身につけておくという意識は、男だろうが女だろうが長年の積み重ねの中で大きな意味を持つだろう。立野さんが、「生徒さん皆人柄が良くて・・・」と話されているその“人柄”というのは、旧態依然から自分をどう脱皮させるかを考え実行するという意識の持ち方そのものなのだろう。
 人生百年。“肩書き”以上に人を幸せにする“晩年の魔法の杖”は、実は厨房に隠れている・・・そんな視点を持ってみると、やるべきこと、やれることはさらに広がっていくのではと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

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