ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30-9:50

2019年10月13日のゲスト

池田 考司さん
「北海道学びをつくる会」世話人/
「北海道教育大学札幌校」講師
池田考司さん

札幌市出身 56歳。
明治大学、北海道大学大学院を卒業後、33年間道立高校の教師をつとめ、その間、北海道大学、北海学園大学などで社会科教育、臨床教育学の非常勤講師も務める。55歳で高校を退職。
2018年、ベテラン教師や大学教員らで「北海道学びをつくる会」を立ち上げ、世話人として若い教師たちをサポートしている。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

池田考司さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、去年の秋に札幌で立ち上げられた「北海道学びをつくる会」世話人の池田考司さん 56歳。学校の先生達は日々忙しく、授業や学級運営以外でも多大なストレスを抱え、心を病むことも少なくないという現状を見過ごしてはいけないと、首都圏で活動する「学びをつくる会」をモデルに道内のベテラン教師や大学教員6人が世話人となり発足させたという。若い教師達、そして、将来教職に就こうとしている学生達の参加も募って学習会を定期的に開くその思いを伺った。

 池田さんの経歴も33年間道立高校の教師を務めた“学校の先生”。その間、北海道大学や北海学園大学などで社会科教育、臨床教育学の非常勤講師を務め、55歳で高校退職後は北海道教育大学札幌校で専任講師として将来の教師達を育てることに専念している。そんな中で「北海道学びをつくる会」を立ち上げたのは、若い先生たちが悩みを気軽に話せる場を作れないかと思ったからだという。時代的にも教師の大量退職の時期を迎え、教職としての蓄積が伝わりにくくなってきており、現実、忙しさのあまり校内で誰かに相談出来る状況ではなくなってきているとのこと。学校外からのサポートである学習会の運営で心がけているのは、とにかく当事者である若い教師達の話を聴くということ。授業に関するスキルや技術を教える講義の場ではなく、思いを話してもらう場なのだという。高校の教育相談に20年以上携わった経験から池田さんが確信しているのは、「悩みは話せば半分以上は解決する」ということ。「人は行き詰まると自分だけがうまくいっていないと自分を責めてしまう。行き詰まるのは自分だけではないと気づいてもらうために、“ここだから話せる”という少人数の場を大事にしたいのです」と、場づくりの意味を語る
 首都圏ですでに行われている活動をモデルに札幌でも立ち上げ、各地に少しずつ広がっていってほしいというその思いの根本にあるのは、独りで悩みを抱えて消耗してしまう人を無くしたい、支えたいという思いとともに、“教師という仕事のやりがいをちゃんと伝えていかなくては”という未来へ託す教師の矜持。「忙しく大変というイメージばかりが先行しているが、思春期の若い感性と出会って、育っていくのを見るのは教師という仕事の大きな喜び。それを是非感じて貰いたくて」と話す言葉の中に、戸惑うことの多い20代の教師達や教職を目指す学生達を手弁当で支える原動力が表現されていた。

池田考司さん 収録後も、「人は話せれば何とかなる。だから、“聴く人がいる”ということが大事」など、改めて噛みしめてみたい言葉が池田さんの経験則の“引き出し”から発せられる。教師という仕事に関わらず、人として自己訓練が出来る大事な要素は何なのかを是非訊いてみたいと思い、問いかけてみる。
 「人として備えて欲しい力は何だと思いますか?」
 「基本は、困った時に相談出来る“相談力”ですね」
 そうか、そういうことか…と、想定していなかった答えに頷く。池田さんは続ける。
 「自分の弱さを認め、それを隠さずに口に出すことを大事にして欲しい。そこから答えも見つかるし、それが出来る人は、誰かの相談にも乗ってあげられます」
 ふと、社会に出てからの自分自身の40年間が頭の中に蘇る。ほんとうにその通りだ。家庭内で、職場内で、人に思いを話せるようになってから目には見えない“軌道”の上を何とか進んで来られたような思いに行き当たる。心をすり減らさないために養っていきたい人間力は“相談力”。それはそのまま誰かを支える力にも繋がる。大事なのは、人と共に生きる社会の中で互いに育み合うこと。“誰かに相談していいんだよ、あなたはけっして独りじゃないんだよ”と、誰かの心を静かに受け止め続けるということも、“先達”として出来る役割だと改めて感じる時間だった。

 前回のこの欄で、個人的に“活躍”という言葉をあまり使わなくなった・・・という雑感を書いた。「ご活躍を・・・」という社交辞令的な定型表現がどうも自分の中で上滑りするし、「ご活躍ですね」と言われるのも気持ちに少しズレがある、と。たぶん、目指す目的が“活躍”という到達点ではないと年齢と共に腑に落ちたのだと自己分析する。年齢を重ねて尚も自分の力を何かに注ぎ続けている人を見ていると、この人達はもはや、“活躍”という山ではない、さらにその先の未知の山を越えようとしているのだと感じ、尊敬する気持ちになる。個人的な感動で恐縮だが、72歳の今もオリジナル曲を作りライブツアーを全うする小田和正さん。その圧倒的に心を揺さぶる生の歌声を聴けば“活躍を続けている”などという言葉が陳腐に響いてしまう。もはやそこから遙か先の山を修行僧のように静かに登っているのだと、半世紀近くの変遷を見つめ続けて来て確信させられる。それはたぶん、もはや自分のために頑張るのではない“山登り”。向かう理由は分からずともそこに向かおうとすることで確実に何かが人に届くのだと確信している、その思いそのものが魂の奥深くに響く。
 音楽や芸術などの希有な才能を持つ人だけではなく、平凡の中に生きる私達ひとりひとりが取り組むことにも共通しているものはあるのではないか。“何のためにその仕事をするのか”という新たな“山”を探していく意味。仕事をする意味は生活の糧を得ることも大事なひとつには違わないが、経験を重ねた人は、次の時代の人達の為にその経験則や技術、大切なことを次に受け渡すという役割や、目の前の人に喜んでもらう働きかけ、誰かを支える心の仕事に向き合うということがもうひとつの大事な“糧”になるのではないだろうか。なんと言っても、誰かの心が幸せになるための唯一無二の“仕事”を見つけ出すことは、自分自身の生きる意味を見出す“登山”になる。
 そういう“山”を自分のペースで登る人達が行き交い、若い世代とも相互に影響を与え合える世の中こそが真の高齢化社会・・・そう言えるような時代を作るのも当事者になりつつある私達世代なのかもしれないと、池田さん達が登っている“山”の話を聞きながら考えていた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

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