平成24年3月放送
ゲスト荒川 義人さん(天使大学栄養看護学部栄養学科長・教授) |
「食を通じて北海道を元気にすることが、私のライフワーク」
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1952年 旭川に生まれる
1975年 北海道大学大学院進学とともに北大野球部監督に就任
1983年 北海道六大学野球で18年ぶりに優勝
1984年 北海道栄養短期大学(現在の北海道文教大学)専任講師
1997年 同教授
1998年 天使女子短期大学(現在の天使大学)教授
2004年 同栄養学科長に就任
日本栄養改善学会評議員・理事、日本栄養・食糧学会評議員、日本農芸化学会会員
北海道食育コーディネーター会議座長(北海道)
札幌市食育推進会議会長(札幌市) 北海道ブランド品種認定委員(北海道)
北海道フードマイスター制度運営委員会副委員長
コープさっぽろ農業賞審査委員、北海道T 1グランプリ審査委員長 |
 札幌旭丘高校から北海道大学農学部に進学した荒川義人さんは、在学中に野球部の主将として活躍。一方、学業では食への関心から農芸化学を専攻したために、田んぼや畑に直接出ることがなく、土=野球のグラウンドという学生生活を送りました。
農業の現場にふれずに過ごしてしまった学生時代の反省が、荒川さんの現在の活動-フィールドで直に農業者とふれ合い、道産食材の価値を生産者と地域とともに高めるさまざまな取り組み-につながったと言います。
当時の北大野球部は強豪校ではレギュラーぎりぎりとされるような選手で構成されていたといいます。しかし、図抜けた才能や環境に恵まれなくても、選手の努力の積み重ねが思わぬ好結果を生んだことや、チームプレーで乗り切っていった経験が、今、荒川さんが北海道の一次産業とともに歩みながら埋もれている能力を引き出すことにつながっています。そして、現役選手から監督時代を通じて培った人脈は、現在の先生を支える大きな力になっています。
食べ物に向けられる世の中の期待は、栄養的に優れておいしければいいという時代から、食べ物が病気の予防や治療にいかに役立つかを重視する傾向へと進化してきたといいます。管理栄養士を育てる立場にある荒川さんは、その社会的評価と認知度を高め、北海道の管理栄養士全体のレベルを引き上げるリーダーを作っていく使命を担っています。
そうした中で、荒川さんが顧問として力を入れているのが、学内サークル『北の食物研究所(北食)』です。『北食』を立ち上げたのは、管理栄養士が患者に料理を提供する時に、その食材がどのように作られているのかを説明できなければ、「これを食べると元気になります」と言っても説得力がない。そういうことをきちんと知った上で料理を提供する栄養士になってほしいからでした。
北海道の食材を勉強することは、産地と生産者を知ることから始まります。『北食』は、
農業実習やファームステイを通じて、後志や石狩、空知の生産者と直に交流してきました。
そして、その過程で築いてきた産地とのいくつもの食のコラボレーションが、今年、大きな花を咲かせます。『北食』の有志が当別町の亜麻生産者と取り組んだ「当別町亜麻食品開発プロジェクト」が、「第7回キャンパスベンチャーグランプリ北海道」の最優秀賞に輝いたのです。これまでにも、大手コンビニとコラボした「お父さんのためのお弁当」など、いくつもの実績を重ねてきた『北食』。1年生たちも先輩に続けと意欲満々で、今、十勝の生産者から届いた大豆でオリジナルの味噌を作ろうとがんばっています。
荒川さんご自身も現在、ひとつの大きなプロジェクトの中心にいます。知人の韓国料理店のオーナーらと3年越しで取り組んでいる「オール北海道」、つまり素材をすべて北海道産でまかなう食品作りです。その食品とは「鮭節明太子(さけぶしめんたいこ)」です。
明太子は、もともとは、主原料の北海道産タラコを福岡のメーカーが韓国風にアレンジしたもので、北海道の良質な食材が他県で加工されて名物になったことから、北海道を“原材料供給基地”と揶揄する際の典型事例としてあげつらわれてきた経緯がありました。そして、その味のベースを担ってきたのは日本伝統の調味料かつお節です。
「オール北海道」の料理や食品を作りたいというのは、北海道の食にかかわる多くの人々に共通する願いでした。しかし、そこに常に立ちはだかるのが北海道ではとれない鰹によって築かれた日本食の文化でした。
その壁をクリアしてくれたのが「鮭節」の登場でした。道立食品加工研究センターがブナザケ(ホッチャレ)から開発した「鮭節」は、かつお節に比べて“うま味成分”が3倍以上、“甘味”2倍以上という優れもので、鮭の産地・羅臼町のメーカーなどが生産に乗り出して5年。北海道の食の発展に今後もっとも活用が期待される調味料として脚光を浴びています。
荒川さんが参加した「オール北海道・鮭節明太子プロジェクト」の最後のオール北海道の課題は唐辛子でしたが、これも、むかわ町で唐辛子を生産しているところがあって解決。今、札幌市内の大手食品メーカーで本格的な生産体制に入ろうとしています。「鮭節明太子」で福岡に逆襲する日がそこまで来ています。
荒川さんは現在のプロフィールが示すように、北海道の「食育」の中核を担っています。日本人の食生活は、20年前から30年前がもっともバランスが取れていたところから、食育にそうした「日本型の食生活」を取り戻すことが一つのテーマとなりました。けれども、北海道では「日本型の食生活」はほとんど地元のものでまかなえています。地元のものを消費するいわゆる「地産地消」です。そこで、荒川さんは、これから食育に新しい計画を立てるときには「日本型」というより「北海道型の食生活」を目指そうと提言を続けています。
荒川さんの提言は食育にとどまりません。「地産地消」は、たしかにその土地の産品を地元で消費するという点で一定の経済効果は見込めますが、その多くは“地元愛”に支えられている部分があります。荒川さんは、北海道の産地から生まれる良質の素材にもっと付加価値を与えることで北海道外にまでそのおいしさと安心を届ける。そして、その評価や利益が産地に還元されることで産地がより活気づくことが大切という新たなコンセプト=「地産地活(ちさんちかつ)」を強く提唱しています。
現在、北海道の農業の若手生産者の中には、本州などでサラリーマンをしていた人が地元に帰って農業に従事する=リファームする人が確実に増えていると荒川さんは言います。
「きたなくて」「きつい」“K”ではなく、「かっこよくて」「金がもうかる」“K”だという意識が若手生産者の間に増えつつあると。
しかし、そこに今立ちはだかろうとしているのがTPP=環太平洋経済連携協定の問題です。北海道の豊かな食材とそれを育み活かす努力、そして、そこに築かれた信頼がひいては北海道の農業と食に関わるすべての底上げにつながるという信念で、荒川さんはTPP問題の行方を注視し、教育と啓蒙を続けています。
■ 第1回 3月 4日放送
■ 第2回 3月11日放送
■ 第3回 3月18日放送
「中村美彦の無頼放談」は、3月の放送をもって終了いたします。
長い間ごらんをいただきありがとうございました。
(プロデューサー 五十嵐浩二) |